彩 愛 美
残り雨慕情
この街に今も 小さな残り雨が降り続いて
まるで私の心を 見透かしたように空が笑う
何時までも晴れぬ 心の凝り雨を拭えなくて
何処か定まらないまま 視線をずらして空を仰ぐ

まだ渇き切らない間に 降る次の雨に怯える
どれだけ傘を用意しても 追い付けはしない

支え切れない心の堤防 流れを読めない愛の行方
繋ぎ止める程の余裕も無く 凍えて行く叫び
声に成らない恋の命綱 握り締め続けて居ても
雨に滑るこの手に掴める恋など 見付けられなくて


何処に居ても変わりはしない 愛の残量が気になる
直ぐにチャージしなけりゃ もう一歩も進めなくなる
何時までも同じ 気持ちのままで走れはしなくて
何処まで進めるのか 不安をダブらす空を仰ぐ

今の私に出来うる 次の手を考えてる
どれだけ無駄な思考しても 空回りしても

何時切れるか解らない 細い糸に全てを託して
足掻き続ける未練の不様さ 全てを晒け出し
このまま終わる恋の運命 見て見ぬ振りをして居ても
雨に曇るガラスに書いた文字のよう 直ぐに消えて行く


もう諦めよう これで最後にしようって
想うだけでは 次の恋には進めはしない


罪に問われる心の葛藤 流れを汲めない恋の末路
行くも止めるもどちらも棘道 裸足で歩いて行く
声を洩らして恋の断末 絞り出すように泣いても
雨が残るこの街に居続けるなら これきりにしよう
彩 愛 美
NO S.O.S.

誰かが
何処かで
助けを求めている
声は届いているのに
誰も振り向きもしない

少しでも自分に
リスクがあると
見ない振りをする

資金援助のように
直接関わらない事には
積極的でも
幾ら人助けでも
我が身に
火の粉が降り掛かったり
不利益になるような時は
消極的になる

排他的だとか
村八分だとか
小さな組織を作っては
余所者に対して
交流しないとか
内向的な国民性
他人の事なんて
構ってられない
小集団意識の塊

救えないS.O.S.
裏返せば
救ってもらえないS.O.S.
どれだけ大声を
上げたとしてもね
彩 愛 美
雨月雨日雨降りの夜
ピンヒールの 置き場に悩む程の
水溜まりのあまりに多さに 頭を抱え込んだ
行く手を阻まれた 堕天使達が無駄に邪魔をする
何処もかしこも 真っ直ぐに進めやしない

こんな事なら 最初からレインブーツで
出掛ければいいと… でもおしゃれじゃ無い

雨月雨日 雨降りの夜は
テレビも ラジオも 電気も 消して
アロマキャンドルの揺れる炎眺めて
遠い場所に居るあなたの事を
一晩中 想い続けた


重た過ぎる 頭を支え切れず
崩壊して行くあまりの 橋脚の脆さに
重ねて来た月日の 一つ一つが無駄に想えて来る
馬鹿も大概に しなさいよと責め立てた

自画自賛した 飯事恋愛の結末
こんなんじゃないと…でも潮時なんだよね

雨月雨日 雨降りの夜に
一人で泣いたって いいじゃない
誰かに迷惑 掛ける訳でもないし
誰かに素顔を 見られるでもないし
少しだけ ほっておいてよ


一度泣いたら 後は忘れてしまえるから
こんな事は 何時もの恒例行事だから…


雨月雨日 雨降りの夜が
静かに 流れて 記憶を 濡らす
泣けない喜劇映画の 冷めた笑いにも
重い腰上げる 電話のベルが
虚しく 鳴り響いた
彩 愛 美
乱舞る雨(Ramble Rain)

薮雨乱れる 街の中
整備不良の 道々は
不規則な 水溜まりばかり
毎日 増え続けて
人も 車も スリップを
繰り返しては
高い雨飛沫を上げて
二つの雨を 重ねて行く

崩れず 流れず
纏張り着いて
離れようとはしない
ザラ付く未練の砂粒
心の中ではまだ
終了ボタンを
押せずに居る事も
何処かで解って居た

悪巧みを企てる
一部始終の不始末
誰かが何処かで視ていて
面白可笑しく拡散して
たくさんの水溜まりを
勝手に 造り出すのね

乱舞る 高飛沫く雨
不機嫌そうに遠避けても
傘など何の役にも立たず
ただの飾りに過ぎないと
今更気付いたも無いもの

そうね
もう濡れるしか無いって
覚悟だけはしっかりと
しておく事ね
彩 愛 美
夢見る頃を過ぎても
雨雫に歪む硝子窓に 震える小指で書いてみた
あなたの名前が ブルーのイルミに滲んで
霞んでぼやけて 読めなくなってしまうわ
想わず溢れた 吐息の重さに空気まで沈む

夜のスクランブルに 飛び込んだら
きっと誰かが 肩にぶつかってくれるかなと
微かな期待さえも 打ち砕くようにすり抜ける
誰もこんな私に 構う程暇じゃないのね

今日も眠れない夜を
何時ものように 続けている
何時までも子供のままの気持ちで
夢見る頃を 過ぎても…


シュークリームが 上手く食べられない コルネが 上手く食べられない
あなたは口とか手とかを ベタベタにして
夢中になって 無心になって 食べているのね
幾ら声を掛けても まるで気付きもしないくらいに

そんなあなたがずっと 好きでした
何時からか過去形に 流されてしまう時間は
僅かに手を離した その隙間に割り込んで来て
誰にも届かない 場所まで遠ざかって行く

交わす言葉を 失くしたように
無音の闇を 拡げて行く
無邪気過ぎる 笑顔も泣き顔も
夢見る頃を 過ぎても…

昨日見ていた 夢などとうに
記憶の彼方に 沈んで行く
気後れしている 暇も無いのね
夢見る頃を 過ぎても… 夢見る頃を 過ぎても…