哀切

過去ログ99 2013/11/7 0:08

◆真田幸村
月の満ち欠けが如く移り行く我が心。此の手の内に在るものだけで何故満たされぬのか…何故、焦がれてしまうのか。何れ程愛されようと、此の胸の空虚は埋まらぬ。ただただ、苦しさに喘ぐばかりだ。

◆竹中半兵衛
きっと悟られてしまうだろう。まあ、見ぬ振りをしてくれないかな。

とても大事なものを失くしてしまった。…この世に一つしかなかったものだ。これで良かったのだと、思わねばならない事も承知している。

幸せだった、と。

◆片倉小十郎
此の侭、心が離れるかも分からねえな。
今迄が悉くそうだった、考えねえようにはしているが、此ればかりは何とも言い様がねえ。…柄にも無く怯える己。ハッ、笑えるじゃねえか。何度も経験してきた展開なら、何も今更恐れる事なんざねえってのに。何れだけ頭抱えようが変わらぬ事態。御隣同士の仲良しサンだったろうが。慣れてるだろ。何を今更。なのに脳裡掠める展開が心を乱す。
主には到底見せられねえ無様。
剣筋は只、鈍るばかり。

◆大谷吉継
あの日、初めて会うたぬしと言葉を交わしながら、不意に此の場で恋慕を告げねばならぬ、でなくば屹度後悔すると、降るような何の脈絡もない確信に襲われた。
何を莫迦なとわれながら思った。そのような真似に出られる訳がない。

だが、結果としてはあの予感の通りとなった。
あのような事は後にも先にも覚えがない。あの予感に従ったとしても、一笑に付されるだけで終ったろう。
それでも、…あの予感がなくば、ぬしとの別れはよくあるそれの一つで済んだのだろうかと、考えてしまうのは止まぬのよ。

幾年を過ぎて尚もぬしを忘れえぬ、われの愚かさに呪いを。

三成、ぬしの誕生日に祝いを。

幸であれと願うばかりは変わらぬ。