怪談集




 
  【No.25 Res.1】

ホテルの怪


1 Name
 
県内のとある町に小さなシティホテルがありまして、そこは昭和の高度経済成長
時代に建てられたというちょっと古いホテルなのですが、鈴木♂がその町に住む
友人の家に遊びに行った時に偶然聞いたお話はこんなものでした。

その席には友人と私とは初対面の彼の友人が同席していたのですが、その彼の
友人がそのホテルに夜間のバイトに行ったときのお話なのだそうです。
そのバイトとは終夜の電話受付をしたり館内の見回りをしたりとそういった感じ
のものだったのだそうですが、彼がその深夜の見回りをしている最中にトイレ
に入った時の事です。

彼は小便器で用を足していたのですがその最中にトイレのドアが開き、誰かが
入ってくる足音が聞こえました。
その足音は彼の後ろを通り過ぎたそうなのですが、彼が「誰だろう?」と顔を
上げて辺りを見渡してもそのトイレには彼以外誰もいなかったそうです。

そのフロアには誰にも貸さないという客室があったり、深夜になると廊下を
歩く足音がはっきりと聞こえるのに歩いている人の姿は見えないといった
怪現象が起こるそうなのですが、この話を聞いていた私の友人は「やっぱり
出るのか」とこのホテルに関する因縁話を聞かせてくれました。
 
 Del

2 Name
 
彼の家は先祖代々その町に住んでいるという家で、町の中心部から少し離れた
場所にあるこのホテルの土地が江戸時代にはどういった事が行われていた場所
だったのかを私たちに聞かせてくれました。

このホテルが建っている場所というのは江戸時代は火葬場で、しかもそれは
普通の火葬場ではなく、伝染病が発生した時などに感染して死んだ人の死体を
焼くという死体処理場といったものだった。
その頃は伝染病(流行り病)の原因や対策など全く分からないという時代だった
ので、感染する事を恐れた住民たちはその恐怖からまだ生きている患者も生死を
問わずこの火葬場で焼却したらしい。
だからこの土地だけは地元住人は誰も手を付けず、戦後になってもここだけは
大きな空き地になっていた。
そしてその事を知らない不動産屋と業者がこの土地を買い取ってホテルを建てた。

彼が語ったお話は大体こんな内容だったのですが、それが本当にこのホテルで
起こる怪現象の原因なのかどうか定かではないのですが、土地というものは
それにまつわる歴史というものが必ず存在するものですから、地元の人が手を
付けない場所というものは必ず「何か」の理由があるという事ですね。
ちなみにこのホテルは今でも普通に営業しております。
 
 Del

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