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【No.46 Res.2】 墓地の向かいの家 1 鈴木♂が小学校6年生の頃、つまり'70年代の前半くらいにあったお話です。 その頃は'70年代心霊ブームの直前くらいの時期で「私は幽霊を見た」とかが 既に出版されておりました。 どういった切欠だったのかは忘れましたが鈴木♂の同級生の家に心霊写真がある という話が出て、鈴木♂は彼の家にその心霊写真を見に行く事になりました。
雨がポツリポツリと降る暗い秋の夕方に彼の家を訪ねたのですが、その家は 道路をはさんだ向かい側に古い墓地があるという家で、その家自体も古い木造 二階建ての家で道路に面した二階にある彼の部屋の窓からは道路の向かい側 にあるその墓地がよく見えました。 私が彼の部屋に入ると彼はお菓子などを取りに下に降りて行き、その部屋には 私ひとりだけが取り残されました。 時間は電気を点けるか点けないかという薄暗い時間帯です。
すると大勢の何者かに見られているような今までに感じた事の無い感覚に襲われ、 鈴木♂はもの凄い恐怖感に囚われてしまいました。 やがて彼がその部屋に戻ってきたのでその事を話すと彼は「みんなそう言う」 と言い、それから件の心霊写真を見せて貰いました。
2 その写真は昭和40年代の初めくらいに庄内地方で撮影されたモノクロ写真で 彼の親戚の葬式のときに親戚一同が集まったので、写真師に頼んである旅館の 大広間で親戚一同30人くらいが三列くらいに並んで撮った記念写真でした。 彼はここがおかしいとその写真の解説をしてくれたのですが、私がその写真を 見てみると廊下側から光が差し込んでいる大広間に居る親戚たちの横に 人型の影があって、その影が光の入ってくる廊下側に向かって伸びています。 モロに顔が写っているという心霊写真では無かったのですが、私は生れて初めて 見る心霊写真の現物にちょっと感動してしまいました。
それから彼と二人で雑談とかをしていたのですが私がさっき体験した事の話 になって、私が「この家に何かあるんじゃないのか?」と聞くと彼は 「この家も出るんだ」と話をしてくれました。 彼には当時高校生の兄がいて、その兄がある朝階段を降りて一階にある台所に 入ろうとすると台所の入口に掛かっている暖簾(のれん)の下に何かが見えます。 よく見てみるとそれは人間の膝から下の裸足の足であって、それはスタスタと 歩きながら台所を横切って行ったそうです。 彼の兄は「誰だろう?」とすぐに暖簾を上げたのですがそこには誰もいませんでした。 その他にも詳しくは話してくれませんでしたが彼の母親も何かを見たそうです。
3 そして私はその家を二度と訪問する事は無かったのですが彼とはそれから 中学時代も同じ部活だという事もあって中学時代も親しくしておりました。 それから時間が流れ、高校生くらいのときに彼の父親が死んだという話が 伝わってきました。 その父親はまだ四十代くらいでの若死にだったのですが、彼とは既に高校も 別だったので特に悔みに行くという事もありませんでした。 そして更に時間が流れ鈴木♂が大学を出て社会人になって三十代の頃に 今度は彼が死んだというお話が伝わってきました。
死因は彼も彼の父親も病死だったのですがそれが単に若死にの家系だったから なのか、それともあの墓地の向かいにある古い家に住んでいたからなのかは 分かりません。 今となってはあの家って俗に言う霊道だったんじゃないかと思う事もあるのですが それが彼の家の運命を左右していたのかどうかという事は謎です。
鈴木♂の高校時代の同級生も噂を聞くともう一〜二割くらいは病死や自殺で いなくなってしまったそうです。 男のほうがやっぱり何かと短命ですね。
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