愛に纏わる御噺

私が貴方の隣で小難しい本を読んでいる際、退屈の塊と化した貴方が静かな耳打ちにて愛に纏わるお話を聞かせて下さるならば私は本を閉じ、この目に貴方を映し遠くは見えないぼやけた視力を戻す事に努めます。

一晩で良いのです、貴方の声とお顔を近くで感じ見ていたいのです。

爺の妄言と貴方は呆れて笑うでしょう。ですが所詮一夜。睡魔が袖を引き目が覚める頃には総てお忘れになられている筈です。私も忘れます。

ですからほんの数刻、私に割ける御時間が御座います方は私の傍へ来て下さいませんか?細かい事は申しません。

暇潰し程度の心持ちにて参じて頂ければ。貴方が眠るのを見届けた後、私は再び本を開こうと思います。貴方が紡いで下さった言葉を噛み締めつつ。

ではお待ちしております。