1 鈴木♂

足音

JAL123便が群馬県の御巣鷹山に墜落したのは'85年8月12日の事でした、
このお話もその年の8月から9月頃にあったお話です。

JAL123便が墜落した時に私は仕事で岐阜県に長期出張をしておりました。
その頃、私の父方の祖父は末期の胃癌で地元の病院に入院しておりましたので
私は出張に出掛ける前夜に入院している祖父を見舞ってから岐阜に行きました。

岐阜で仕事をし現地の旅館に帰ってからTVを見るとJAL123便が行方不明だ
というニュース速報を放映していたのを今でも覚えています。
そして結局、JAL123便が悲劇的な結末を迎えたのは皆様も御存知の通りです。

その頃、私は宿泊していた旅館で一度だけ不思議な夢を見ました。
荒野というか広大な荒地の中で私の父が白い布に包まれた骨箱を首から下げて
一人で淋しそうに俯いて立っているという夢でした。
やがて二週間位だった長期出張も終わり私は新潟に帰って来ました。
家に帰ってみると既に祖父は亡くなっていて、葬式も初七日も無事に終わって
おりました。
2 鈴木♂
そして9月に入ったある晩の事です。
私が二階の自室でラジオを聞いていると一階にある居間の上のトタン屋根の辺り
から何かの物音が聞こえてきました。
私が何気なく時計を見ると夜の10時20分位だったと思います。
その物音はよく聞くと人間が二本足で屋根の上をゆっくりと歩いているとしか
思えない足音でした。

私は誰が屋根に上がっているんだろうと思い、一階の居間に下りてみると
そこにいた両親と妹が既に足音に気づいていて、全員で天井を見上げているのが
見えました。
私は「あれは一体何だろう?」と家族に聞きましたが、当然の事ながら誰も足音の
正体を知りませんでした。
その足音は10〜20分間位、ゆっくりと屋根を行ったり来たりしていましたが
やがて聞こえなくなりました。
3 鈴木♂
私はすぐに外に出て道路から屋根を見ましたが何も異常はありませんでした。
今でも覚えているのはその時丁度、居間に猫がいて足音が聞こえている間は
家族と一緒に猫も天井をじっと見つめていたという事でした。
その足音はそれから三日間位、夜の10時前後になると聞こえてきましたが
聞こえている時間が序々に短くなって行ってやがて全く聞こえなくなりました。
肉親や友人が亡くなるとやはりしばらくの間は不思議な事が起こるみたいです。