2 無名さん
藤浪くんにとっての幸せってなんだろう。
それが、僕にはわからない。
きっかけは、
今まで苦しみ続けてきた藤浪くんを幸せにしたいと思ったことからだった。
藤浪くんは、僕が守るよ。
今までの苦しさを忘れさせる為に、藤浪くんをうーんと幸せにする。
もうエース(38)よりも能無しの監督は消したんだ。これからはずっと笑顔でいられるよ。
・・・そんなのはどうでもええ。
聞き返す前に、藤浪くんが次の言葉を紡ぐ。
俺は、十分に幸せや。
・・・どうしてだろう。
笑顔だった高校野球の試合とは違って、今マウンドでは苦しそうで悲しそうな表情しかできなくなっているのに、幸せ?
俺はな、隣に誰かがおってくれるだけでええんや。
抱きしめんくても、ちゅーせんくてもええ、ただそばにおって、俺を満たしてくれたらええ。
藤浪くんはそう言った。