2 教徒
笑いの神―それは、ノシェル家に仕えたハーリーエッゼン(シタル紀1200~70)という執事が、赤ん坊をあやすために、笑いの神の降臨の儀式を行ったという言い伝えがあります。
しかし、それは最初で最後の儀式でした。
マブム教の聖書《マバマン》書の第十四節・第一話『ヘレナービアスタインの誕生』によると、ハーリーエッゼンは、ノシェル家の第77子―ヘレナービアスタインの世話を任されました。
しかし、ヘレナービアスタインは笑いの感情がありませんでした。その代わりと言わんばかりに、彼は、生まれながらにして火炎瓶ほどの巨大な陰茎を持っていました。
そこで、ハーリーエッゼンは考えました。大人である私の陰茎は、ヘレナービアスタインの陰茎より小さい。これをヘレナービアスタインに見せれば、大笑いするのではないかと。
だが、ヘレナービアスタインには笑いの感情がない―そこで、笑いの神を彼に憑依させようと思い立ったのです。
そして、降臨の義式のとき―ハーリーエッゼンは全裸になり、ヘレナービアスタインの前に仁王立ちし、唱えました。

アルブワーナーガ アルブワーナーガ カーヤン

笑いの神がヘレナービアスタインに憑依しましたが、彼は笑いません。すると、
ハーリーエッゼンの陰茎と精巣が爆破されました。
ヘレナービアスタインは、笑いました。
ノシェル家の主君は、ハーリーエッゼンに褒美を授けようとしましたが、ハーリーエッゼンの姿を見た者は誰一人いませんでした。
笑いの神は、生の監視者であるフダン神と対立する悪魔―ノーレイラスだったのです。