1 憂うる人

大衆はだまされてはいけない。

<国民はだまされてはいけない=第3弾>

「最有力誌編集長の正統評論ご案内」

★小沢氏強制起訴で見つめ直したい民主主義に根差した法と正義 [平成22年10月]

 東京第5検察審査会の議決によって民主党の小沢一郎前幹事長が強制起訴されました。刑事被告人になる小沢氏に対して民主党を離党すべきだとか、議員辞職すべきなどの声が聞こえてきますが、ここはいったん立ち止まって、ものごとを冷静にロジカルに考えるべきだと思います。小沢氏が議員を辞めたり離党したりする必要はまったくありません。

 厚生労働省局長・村木厚子さんの裁判や大阪地検特捜部・前田恒彦検事の捏造事件で私たちが 学んだのは、これまでないがしろにされてきた「推定無罪」の原則がいかに大切かということでした。それが小沢氏であろうと誰であろうと、起訴をされた段階 では推定無罪として扱わなければいけません。この当たり前の原則が守られていなかったことのほうがおかしいのです。

 推定無罪の原則に立 つなら、起訴されたからといって被告人の地位や身分に影響を与えることがあってはいけないのは当然です。したがって離党や議員辞職を求める人たちにはまっ たく根拠がありません。しかし、これまでの日本社会では検察官によって起訴されたというだけで重大な意味があるとされてきたのは事実です。


☆小沢一郎氏に対する「起訴すべきだ」との議決の要旨を張る職員(10月4日)
  外務省の役人だった作家の佐藤優さんや村木さんも、起訴された段階で「起訴休職職員」の扱いになっていました。民間企業の場合は解雇されることもありま す。これは、検察官が起訴した場合の有罪率が99%を超えるという現実があったからです。それはある意味、検察に対する絶対の信頼に裏打ちされたものだっ たと言ってもいいでしょう。

 その検察の判断を、検察審査会の11人のメンバーがひっくり返したというわけです。小沢氏に関しては、新聞があれだけ「小沢=悪」のキャンペーンを張っていただけに、一般市民感覚として「起訴すべき」との結論を出したことは理解できなくもないのですが、裁判で は無罪になると私は見ています。

 それは小沢氏が日ごろから主張しているように、検察が長い時間をかけて調べた結果、罪に当たる事案はな いと判断しているからです。このことはほとんど報道されていませんが、大林宏検事総長が日本記者クラブで行った講演でも、「小沢氏を有罪とする証拠はな い」と明言しています。

 検察は小沢氏に対してはかなり強い意志をもって捜査に臨んでいました。村木さんの事件を見ればわかるように、検察はその気になればどんな手段を使ってでも起訴しかねない組織です。その検察の「力」と「技」を持ってしても、ネズミ一匹見つけることができなかったのです。

 党の内外を問わず、政治的に小沢氏と対立する人たちが今回のケースを政争に利用したくなる気持ちもわからなくありません。ただ、それは民主主義を踏みにじ る行為だと自覚してほしいと思います。国会議員の身分を決めるのは有権者以外であってはいけません。身分も明かされていない匿名の11人の「市民」の判断 が、小沢氏の地元有権者の判断に優先してはいけません。起訴は起訴として淡々と手続きを進めればいいだけのこと。それとこれとはまったく別で、離党、ましては議員辞職などあってはならないことなのです。

 これは小沢氏が好きとか嫌いとか、支持するとかしないといった次元の話ではありません。民主主義に根差した法と正義はどうあるべきかという問題です。そのことを、もう一度よく考えてみるいい機会になれば、と思います。
(PC)