1 華墨慶斗

遥か遠い彼方から……

あの悲しい戦いから数年後、子供たちが大人になり、世代交代のさなか、再び宇宙(そら)から侵略の魔の手が伸びて来る。

細やかな変化から始まるソレは、気付いた時にはもう手遅れで…
[裏設定とかEtc.]
宇(時間)宙(空間)の彼方からやって来るのは、滅亡か救済か… 今度の戦闘の主流は、葵とサバイヴ、翡翠とセラフィ、トトと透等の次世代組。
55
言葉を発している間にも、自分は一人薄氷の上を歩いているように感じる。
もしこの氷がすべて割れたのなら…自分は一体どうなるのだろう。

アンバー「随分見ない間に変わったね。サングラスとはガラにもない。」

まぁ、似合ってなくはないと言われると、碧は微かに苦笑する。

碧「そりゃどうも。それよりアンタ、見かけよりかなり残酷だね。動けない相手を一方的にいたぶるなんて。」

相変わらず飄々とした口調に、アンバーの心中で何かが溶けてゆくのを感じた。
まるで、自分の心を縛っていた鎖がゆっくり解かれる気がして……。
しかし、それすらも振り切ってアンバーは無理やりにでも言葉を紡ぐ。

「今更何しに来たの?見ての通り、地球はもう終わりだよ。今更地球怪獣が足掻いた所で何になるの?それに、最後の希望も潰えたしね。」
「……それが、貴様の答えか。」

突然上空から聞こえてきた声に、一同は虚空を仰ぐ。
そこには、碧達にとって最も重大な同族―――龍聖が降り立ってきたからだ(傍らには兄も一緒)
[裏設定とかEtc.]
展開遅くて済みませぬ・漸くキーとなる人物登場。
56 華墨
アンバー「龍聖、龍皇…」

悲痛な表情を浮かべて声を振り絞る。
けれど言葉にならなくてうつむいていたら、龍皇に頭を撫でられた。


龍聖「シアン…」

正直まだ思い出せない。
その一言がどうしても口に出せない。
散々言って来たのに、龍聖に向かってそれを言ってしまえば、全てが壊れてしまう予感がして…

不意にサングラスを外され現れたのは、青い瞳ではなく両方とも緑の義眼。しかも焦点が合っていない。
肉眼では何も見えない身体にまでなってしまったのだ。

碧「俺は…あんたらを覚えていない…
それでもなんとなく分かる。俺に、俺自身の生きていた時にとって……」

「あれは何だ?!」


突然聞こえて来た切迫した声に空を見上げれば、無数のミサイル等が撃ち込まれて来るのが見えた。
彼らに知る由も無かったが、それは日本を見捨てた残っていた各国からの核弾道ミサイル。

身を隠す暇もなく閃光がほとばしり、世界を白に染め上げた―――


.
身体にエネルギーが満ち溢れ、目を覚ます。と、

「葵!!」
「サバイヴ!いったい何が起きて…」

膨大な放射線と放射能、熱線等、核弾頭のエネルギーを全て葵が吸い取ったのだと慌てて説明された。
57
だとすれば、生命の危機は辛うじて回避されたという事だ。しかし、その被害はとても大きい。

サバイヴ「やっぱり人間は哀れな生き物なんだな…役に立たなくなったらそれを抹消しようとするなんて……」

今や瓦礫ひとつ残らぬ大地を見てぽつりと漏らす。しかも周囲には他者の気配すらしない。

葵「皆……」


悲しみ混じりに呟いたその時だった。

「あー、無茶苦茶吃驚した!」
「龍聖ぃ、独りにして悪かったぁ〜!」
「離れろ暑苦しい!というか気色悪い!」

「ラピスぅ!」

「パパ、ママぁ!」

あちこちで聞き覚えのある歓声が上がった。しかもギドラ族二匹に至っては先程のショックで記憶が戻ったらしい。
58 華墨
殴られて笑っている。マゾか(爆)

龍聖「貴様、人が今までどんな思いで…」
碧「それでも傍に居させてくれ。今度こそ離れたくないんだ…」

急に真剣な顔してハグし、しかも公衆の面前でキスするものだから、追い付いてきた龍爛とラピスの目を慌てて龍皇が塞いだ。


.
なんとか無事に宇宙に帰ったのを見届けた後、酷い惨状に二の句も告げなかったが、それでも少しずつ復興に向かいつつあった。

相変わらず怪獣と人間との間に確執は残っていたが、ひとまずようやく訪れた平和を満喫していたある日、葵の元に吉報が届いた。


サバイヴ「その子どうしたの?」
葵「僕の弟!」

葵が笑顔でサバイヴの元へ連れて来たのは、灰色の髪と黄色い瞳を持つ、ヘリオスと歳がそう変わらないくらいの小さな少年。

葵「人間に面倒を見て貰っていたんだって」

原型も2mくらいしかないから出来た術である。
葵自身も生まれてすぐは人間に育てられていたので、親近感があるらしい。

名前は、その面倒を見てくれた少年と東斗からそれぞれ一文字ずつ貰い、

葵「健斗っていうんだ」
[裏設定とかEtc.]
GFWミニラ、健斗登場。 次で最後ですかね?
59
サバイヴ「ふーん…良い名前だね。」

ちらりと健斗の方を見れば、同い年のヘリオスと気が合ったらしく、早々から懐いている。今にも駆けっこを始めんばかりだ。

葵「それにしても…此処まで来るのにかなり長かったね……」

思えば数年前、怪獣と人間が殺し合い、ピリオドには自らの父と彼のライバルが死んだ所から始まった。
その後も、ほんのわずかながらの平和が訪れたが、それも一年も経たない間に崩れ去り、先程の様な壊滅間際の戦争が起こった。

全ては風のように去っていった。しかし…散々苦労した末に掴んだのは……


健斗「おにーちゃん、帰ろー。」
葵「あ、あぁ。サバイヴ、行こう。」

サバイヴ「うん!それに皆も…今頃怪獣島に戻ってる最中だしね。」
ヘリオス「健斗くん、怪獣島に帰ったらウルト○マンごっこやろー。」

4人会話を交わしつつ、海へ帰って行く。日本からかなりの距離があるが、それすらも苦にならない。


―――父さん…僕、漸く幸せになれました。

波のさざめく中、水平線からどこか幸せに満ちた咆哮が静かに響き渡った………。
[裏設定とかEtc.]
漸くエンドです。紆余曲折ありましたが、長文お疲れ様でした!