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1 mop

妄想短編小説

書け!
(W31S/au)
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(PC)
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(PC)
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(PC)
74 おしゃれ苺
さあ 次は同窓会に溶け込む為に
いくつかの話題を用意せねばなりません
壁の花なんて聞こえはいいけど
浮いてしまうのはやはり好ましくありませんから


差し当たり 関係が良好であった(と当人は思ってるんでしょ)
女子達に近況を聞く為
やはり手紙を書きます

こちらに来てからの他愛ない出来事や
好ましい容姿の男の子がいるとかいないとか
書き慣れない手紙ではありましたが
それなりに尋ねる事は多く
筆が鈍る頃には夕餉の時間となっていました
母から食事の用意を手伝うよう
呼び声がかかります
そろそろ行かねば
夕食がおあずけになりかねませんので
仕方なく台所に向かう事にします
いくつかに分けた質問を含む手紙なので
後々同じ質問等を書いて混乱しないように
それぞれの手紙の内容を
別の紙に書き留めておくことにしましょう
(PC)
73 おしゃれ苺
そうなると早速
同窓会に向けての準備を始めなければなりません

先生への手紙は年男に対して取った不手際から察するに
かなりおめでたい頭の持ち主だとわかりましたから
「やはり幾人かの仲の良かった数少ない理解者達には会いたい」といった理由をでっちあげて送る事にしました


そして気取らず目立たず かと言って暗くなりすぎないように
そんな服を見繕いながら
あまり友達付き合いが無い故か
滅多にあけなかったクローゼットを開きます
澱んだ樟脳の臭いが優しく私を包みますが
それを振り払うようにして
買い与えられはすれど袖を通さなかった服たちを
次々と体にあてては辺りに置いていきます
この時に初めて
周りの女の子達と同じように
身を着飾る喜びを感じる事ができました

動機が些か暗かったのは
この際考えません
(PC)
72 おしゃれ苺
「・・・・・・・・・ふっ」
小さく溜息をついて
片してあるちゃぶ台を居間に広げ
再度先生宛に手紙を書きます

いえね 年男の事を告げ口してやろうなんて
これっぱかりも思っていません

ただ 同窓会への欠席を取り消して貰う為に
今度は自ら進んで筆をとっています

皆に愛され受け入れられた彼なら
必ず出席するという
あまりに根拠のない考えではありましたが
私に己の正体を明かした彼に近付く手だてとしては
個人的に会いにいくより
同窓会というイベントに格好付けて会う方が
都合も良いでしょうから


問題はいかに彼からの手紙を忘れ

「年男が騙った先生からの手紙には
何も書かれていなかった
と装えるか」
ですが


一度は二度と読むまいと決め
畳んでしまった彼からの手紙を熟読し
無知を演じる為に
必要な事を確認しました

多分今私の目は鈍く輝いている事でしょうね


ふふふ
(PC)
71 おしゃれ苺
いや あの婆さんから近況を確かめるみたいな電話があってさ
何で急にと 思いつつ話を聞いてると
どうやっても僕を探ってるとしか思えなくてね
そしてやたら君の名前を出しやがるもんだから
ピンときてさ

仮に君がこの件に係わりが無くとも

僕だってたまには昔の記憶に苛まれる事もあってさ
いい機会だし
まあ洗いざらい吐いちゃおうと思ったわけだ


ちなみに このインクは2日程度で消えるタイプの
所謂 子供向け探偵グッズの玩具なので
君の目に入る前に消えてたら
僕以外には何の意味もないんだけどさ


じゃあね
・・・・・・・・・・・・・・・・・
不思議と 取り乱したり又ショックで茫然とする事もなく
静かに手紙を折り畳むと
私はトイレに向かいました

嫌な渇きが焼き付いた喉を押さえて
便器に逆流する胃液を吐き捨てます


腐乱臭と酸っぱいにおいが目に刺さり
漸く涙が流れてきました
泣いていたのは10分位でしたでしょうか
あれほど激情に揺れるのは久しぶりでした

年男という人間の為に麻痺させてきた感覚が
皮肉にもまた年男により蘇らされ

また その事実が私を苛立たせます
どこまで彼に振り回されなければならないのでしょうか


無視すれば それで済む事なのでしょうが

手紙に書かれていた
消えるインクの事を思い出すと
いかに彼があざとく世間を欺いているかがわかり

私の頬の熱はいっこうに引きませんでしたが
逆に彼を人として許すわけにはいかないという気持ちだけが
冷静な憤りとして
蘇ったばかりの心の中に息づく事になりました
(PC)