81 作家◆5KV8
>>72
彼を出迎えると、張りつめた目つきをしてた。散々だった試合から、こうしてあたしの部屋をいきなり訪ねてることまで、彼にとってはすべての出来事が、どう整理してよいかわからないもので、そんな動揺が目にも表れてた。
あたしは、彼がこんな状態でも、いやこんな状態の時にこそあたしに会いに来てくれたことが、内心たまらなく嬉しかった。でも今はそんなあたしの気持ちを彼に知ってもらう時ではない。
とにかく上がって…とソファーに座らせ、コーヒーが飲めない彼にミルクティーを淹れて、隣に座る。
ひと口飲んで、ふぅ〜とため息…またひと口。「ちょっと…落ち着いてきたかも…」あたしの手を握ってきた。「今日はごめん…せっかく観てくれてたのに…」そんな…あたしには想像つかないほど緊張したでしょ?「うん…」彼はマウンド上のことを話してくれた。ブルペンでは良かったのに連続四球を出すほどコントロールが狂い、パニックに陥ったこと。3番首位打者の構えと視線の強さに圧倒されたこと。可愛がってくれるキャッチャーさえ所詮は他人、ピッチャーの孤独を痛感したこと…。
彼は話しながら時々涙をこらえてたけど、ついにホロッとこぼれ落ちて…