83 作家◆5KV8
>>81
あ…と思った瞬間、彼はあたしに涙は見せたくないと思ったのか、下を向いてあたしの肩を抱き寄せた。彼の胸に頭をもたれさせるあたし…
「俺…くやしかった…」うん…「相手はみんな強い、けど…、相手の技術とかパワーとかの前に、気持ちが全然負けてた…。自分…自身…に…」言葉が途切れる。相手よりまず自分に負けたことがくやしかったらしい。
監督やコーチと話した…?「監督は、とにかく慣れろって一言だけ…。後でコーチが、次の登板いつ来てもいいように準備しとけって…」その後、例のキャッチャーが「今日のお前の1球1球全部振り返ろう、俺も一緒に考えるから。どんなつらくてもこれやんなきゃ次もねぇからな」と付きっきりでミーティングしてくれたらしい。
そっか…じゃあ今日が始まりなんだね。と、あたしは、さっきからこの世の終わりみたいな顔してる彼に言った。顔を上げてあたしを見ると、しばらく考えて「そっか…」と彼。 ミルクティーおかわりして、やっと気持ちも少しは落ち着いてきたかな。今夜はしっかり休んで、うまく切替えてほしい…
「今夜…いてもいい…? あっ…た…ただ一緒にいたい…」あたしは彼の胸に抱きついた。うん…いいよ…でも、今夜はちゃんと寝なきゃダメだよ。