1 飛龍

VERSUS×WARS

 血の気の多い不良達が集まった最悪な高校『東宝男子高校』

 そこには龍王・キングギドラ一派、白銀紳士・メカゴジラ一派、そして…東宝最強の男・ヴァーサス。

 この三人によって、荒れた東宝男子高校は半ば落ち着いていた。

 しかし、この学校にやってきた若きゴジラによって、新たな波乱が起きようとしていた…。
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「逃げ切れるとでも思ってんのかなー…彼奴等。」

ジグラが漏らした途端、先程の鳥───ニーヴァが彼の元に舞い降りた。

「フフフ、さてな。それより、彼奴等の確保準備はできているのか?」
「あぁ、それなら心配ないっすよ。とっくに潜入隊のソルジャーとレギオン…おまけにもう一匹を忍び込ませましたから。」

潜入隊、と聞いてニーヴァは不敵な笑みを浮かべた。
とにかく皆への“贄”は整った。おまけにやたら仲が悪いのは、運が良ければ仲良く同じ奴の腹の中に収まるだろう。


「さて……何処まで逃げ切れるかな、人間達は。」


何処からか五時を告げるチャイムが鳴った頃には、睛皇男子校を覆い尽くさんばかりのギャオス達が群がっていたのだった。


一方、資料室。黴臭いのを我慢しつつ、景虎達は息を殺して窓から成り行きを見守っていた。

「彼奴等…一体何なんだ?」
「コイツが今時の怪獣ってヤツさ、左近。」

とはいっても、未だに左近は信じられないといった様子だ。
しかし、こんな騒ぎなのに皆は一体どうしたのだろう。
[裏設定とかEtc.]
校舎内に侵入者が───因みにジグラの催眠術の解き方は、無線機の電波がなければ解けません。
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「…他の奴らは大丈夫かよ」

「多分、さっきの野郎の妙な技をくらったんじゃねぇか」

「俺らを喰らった後、じっくり喰ったりして…」

 真顔で言う景虎の言葉に、銀次と左近はゾッとした。

「「変な事言うな!」」

「声デカイって!!」

二人の口を塞ぐ景虎。

「とにかく今は脱出を考ねぇと…。左近、今日はバイク通学?」

「…ああ。拓也の墓参りからそのまま直行してきたからな」

「よし、それで逃げよう!」

「四人も乗せてか!?」

 マッポに捕まる前に事故るな、と銀次が思うなか、景虎は左近の肩に手を置いた。

「大丈夫!お前のバイクテクなら四人乗りぐらい楽勝だ!」

「んっなこと言われても…」

と、左近の目に何かが映った。
[裏設定とかEtc.]
左近のバイク運転はスタントマン並のプロ級です。そして、資料室に侵入者が…。
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「見ぃつけたでぇ、皆さん。」

突然聞こえてきた関西弁。勿論この学校にはそんな者はいない。

「だ、誰だ!?」
「あぁ、自己紹介がまだやったなぁ。ワイはバルゴン。大映八人衆の一人や。」

にじりにじりと近寄ってくる相手。おまけに赤い夕陽に照らされている為、殊更に怖い。

「テメェ…「あーそうそう。出口探そうとしても無駄やで。非常口も玄関も…ぜーんぶ凍らせてしもうたからな。後はぁ……」

爬虫類さながらに冷たい笑みを浮かべ、次にこう言い放った。

「あちこちにソルジャー隠れとるから、何処にも逃げ場ないでぇ?」

「な……!」

突破口は、全部塞がれている。即ち逃げ道は絶たれたも同然だ。

しかし、そんな中でも景虎は勇猛果敢にバルゴンに吠え立てる。

「ンの野郎ぉ!一体皆に何をしやがっ…」

突然腹部に激痛が走った。よく見ると、そこには赤い棒の様な物がめり込んでいる。

最初は暗がりでよく見えなかったが、それはバルゴンの舌だった。
それでも舌がゆっくりと主に戻された直後、景虎はどさりとその場に崩れ落ちる。

「カハッ……!」

「景ぇ!テメェッ…!!」
[裏設定とかEtc.]
冷凍怪獣バルゴン出現。関西弁が特徴で、必殺技は舌技+冷凍ガス噴出と背中からの虹色光線。密かな趣味は宝石集めです。
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 銀次が殴りかかろうとするが、左近に止められた。

「落ち着け!銀次」

「離せ!」

「いいから、落ち着け!」

強く言われ、漸く銀次は大人しくなった。

ここから二人は小声で話す。

「いいか、銀次。あいつらは逃げ道はねぇって言ってるが、絶対どこかに突破口があるはずだ」

「………」

「こんな奴らに、俺らの学校を好き勝手させるわけにはいかねぇだろ」

「……あぁ」

互いの笑みを浮かべ、トンっと互いの腕を当てた。

「さて、と…」

左近はチラッと棚に目をやると、それをおもいっきり蹴り飛ばした。

ドガッ!ザザザザザ!

周りに紙が舞い散るなか、銀次は景虎を背負い、左近は祐樹を担ぐと、資料室を飛び出した。
[裏設定とかEtc.]
資料室脱出。果たして、彼らの運命は―――。
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その一方で不意を付かれたバルゴンは何とか本棚を押し退けていた。
怪我がない分、そこは流石怪獣といったところだろうか。

「っく……油断してもたか…!」

歯軋りしながら廊下を見つめるバルゴン。そこへ、ジグラが資料室に入り込む。

「あっちゃー、バルゴンヘマしちゃったね。」
「あぁ、人間やと思ってたら返り討ちに遭ったわ。」

よっ、と何とか本棚を退け、立ち上がる。

「ところでジグラはん、こんな所で油売っててえぇのか?」
「んあ?イヤ、オレは彼奴等が釣れるのを待つだけだ。おまけにこちらには、切り札がいるしな。」

と、悪意に満ちた笑みを浮かべて地面を見下ろす。かといって誰かがいる訳でもない。確かに“彼”はそこにいる。

「っと、長話してたら怒られるな。行くぜ。」
「あいよ!」

二人は二手に別れてその後を追ったのだった。


一方、銀次達は───不気味な程静まり返った校舎内を走っていた。

「しかし、彼奴あんな事言ってたけど…何もいねーじゃん!」

「だが気を付けろ、何処かで罠が」

左近が言いかけた途端、もそっ、と天井で何かが動いた。

「っえ……?」

見上げると……そこには一つ目の目玉虫───ソルジャーレギオンがギロリと此方を睨み付けていた。
[裏設定とかEtc.]
恐怖のソルジャー出現。果たしてこの結末は……