1 真鍋京子

喜劇・ゴジラ対メガロ2

※前回の続きです。

登場人物は、前回参照の事。
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新・怪獣島……本を片手に帰ってきたゴジラは若干痛む両腕にうだされつつ、息子の待つ自宅に戻ってきた。

「お父さん!」
「あぁ、今帰ったぜ。それと……」

と、三二良から手渡された本を差し出す。

「コレは?」
「所謂戦利品ってやつ。おや……?」

ふと、ゴジラが本に何かが挟まっている事に気づく。しおりにしては小さい。

「何だろ、コレ……あ!」

ミニラが取り出した物、それは大怪獣バトルのカード、しかもそれは“GFWゴジラ”だった。それもオーロラの如し虹色の光が何度も紙面を横切っている。

「きれ〜い……お父さん、コレ貰って良い?」
「勿論。お前の同族が置き土産に残しといたんだろ。」

因みにゴジラも先程の戦利品を持っているが、敢えて見せない事にした。

「ラーバちゃんに見せてくるね!後この本もアンギラスさんに…」

タッとミニラが駆け出した直後、横殴りの突風が吹いた。

「あ」

一瞬カードが風で吹き飛ばされないか心配になったが、それは杞憂に終わった。

「危ない…落とすなよー?」
「うん!ちゃんと持ってるからぁ!」
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遠ざかってゆくミニラの背中を見送りながら、ゴジラはふ、と微笑んだ。

「やっぱ平和が一番だよなぁ……」

前に起きた核実験で破壊された旧・怪獣島が脳裏によぎる。
あの頃は何も知らずに、ひたすら楽しく生きていた。しかし、あの出来事で全てが失われるなんて……。

けれど、その核実験の影響で被害を受けているのは自分達だけではなかった。名も知らない海底王国の人々さえも巻き込んだ───そんな悲劇を二度と繰り返さない様にする為にも、今自分にできる事は何だろうか。

「……クヨクヨ考えたって仕方ないか。さて、飯でも作ろ。」

くる、とゴジラは身を翻し、その場を去っていった。


一方、シートピア海底王国・とある草原。人工太陽の作り出す夕陽が射す中、ガイガンとメガロは茜空を見上げていた。
[裏設定とかEtc.]
久々ながら、長文お疲れ様です。
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「わざわざゴメン…僕の頼みで此処まで……」
「いえ、メガロ様が気に止む事はありません。さて、ごゆっくりお過ごし下さいな。」

と龍姫はメガロに優しく言い聞かせると、後ろにいるアンギラスとミニラに事情を話してそこから去っていった。

残されたのは、ガイガンとメガロのみ。

「そういえば、君をこっそり隠し撮りした時ってこんな空だったよね。」
「確かに……って、隠し撮り!?誰が撮ったんだ!?」

ガイガンに問われるも、それは“企業秘密”という事でスルーされた。

「ま…まぁ良いけど。それにしても、」

さり気に遠くにある北地区を見ると、そこには幾多ものロボットが必死に修復工事を行っていた。
核実験、とは小耳に挟んでいたものの、実際に間近で見たら惨いものだった。
恐らく放射能が抜けるまで気の遠くなる様な年月が掛かるだろう。そんな現実の中でも、シートピア人達は必死に生きている。

すると、きゅ…とメガロがガイガンの手を握り締めた。

「…メガロ?」
「今は、何も言わずに二人でいて。ね?」
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次第にガイガンの指先に暖かみが伝わる。最初は地底怪獣故にゴツゴツしていると思ったが、意外と陶器の様にスベスベしていた。

「しかしな…コレがギドラにバレ「今は他の人の話しないで!」

突風声を張り上げられ、ガイガンは固唾を呑む。
横に目をやると、そこには真顔のメガロが度アップで映っていた。

「メガロ……」
「今は…僕だけを見てて。」

今度はつ、と頬に両手を添えられ、半ば接吻の態勢に入る。

こうなれば、もう逃げられない。

「愛してるよ…ガイガン…!」

ちゅ、と微かな音を立てて、二人は出逢ってこの方初めての口付けを交わした。


そして、永遠とも思える時間が流れていった。
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「……ぷは」

二人が口を離した直後、互いの唇に銀色の細長い糸が後を引いた。
それが何だか、永遠の誓いの証に見えた気がした。

「さて……明日仕事あるけど、サボりますかね。」

その言葉にメガロはキョトンと目を見開く。

「良いの?仕事は?」
「仕事なら、デスギドラに任せる。行こうか。」

つい、とガイガンは立ち、同時にメガロに手を差し伸べる。

「あ…有難う。で、何処へ?」
「お前の家。それしかなかろう。」


最初はそれが幻聴に聞こえた。しかし、それは紛れもない現実だった。

女の子にしか使えない不思議な呪文を唱えた途端、忽ち夢が叶うなんて……できればこの時間が続いてほしいと思った。

「…うん!」


半ば紫がかった空に、二つの人工星がガイガン達を祝う様にキラキラと輝いていた。


End.
[裏設定とかEtc.]
これで本当に終わりです。今までご苦労様でした!