110号室

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■朝比奈紘
責めてほしいくらいだよ。それだけのことしたんだから……(心待ちにしていたこの1週間は相手と楽しく過ごすはずだったのに開幕早々あのような連絡を入れてしまった申し訳なさに眉を下げ、穏やかな相手の態度が今だけは少し辛く思えて。グラスを勢いよく傾ける様子に控えめに笑い声を零しては恋人のストライプ柄の裾を指先でなぞりながら、とんでもない要求を至って真面目な顔つきで述べ)すごく暑そうだから脱いでほしい。服

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■椿屋夏緒
や…責めてる訳じゃねぇから、謝んなくていい。(心の内では今すぐにでも相手の抱く胸中を事細かに聞き出してしまいたい気持ちで一杯で、しかし多くを語ろうとしない相手を前に無理強いするつもりは無いのか極力穏やかな口調を崩さぬよう努め。一旦はキッチンへと引っ込んでしまった恋人の片手には己の好物がグラスの中で揺れ、それを預かって口にすると余程喉が渇いていたのか三分の一ほどを残して一気に飲み進めてから隣へ腰を沈め)メロンソーダ…?ありがとな。…ここで飲むメロンソーダが一番うまい。けど今日は俺が尽くす日だろ、何して欲しい?

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■朝比奈紘
っ、……大丈夫。体調は問題ない。心配かけてごめん(引き寄せられると面食らったように視線泳がせ。口先だけの大丈夫で誤魔化せるはずなどないと知っていながらそれでも他に言葉が浮かばず静かに目を伏せて、頬を撫でられただけで目に熱いものが込み上げてくれば相手がスリッパに視線をずらしたその隙に踵を返してキッチンへ。自分の分はゴクゴクと飲み干し相手のグラスを片手に寝室にやって来るとサイドテーブルに置き。ベッドに並んで腰掛けようか)暑かったでしょ。これ飲みな?

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■椿屋夏緒
…紘、その前にちょっと。ちゃんと顔見せろ。(恋人からの応答を待つ間に大切な合鍵は無くさぬようポケットの中へしっかりと仕舞い、然程待つ事も無く姿を現した相手を捉えた双眸は一瞬嬉々として瞬くも直ぐに険しいものへと変わり。一見すれば普段と変わらぬ様子でスリッパを用意する相手、腕を掴んで多少強引に引き寄せたなら頬を両手で包んで顔色や表情を入念に確認して)体調は?何かあったのか?心配で心配で…生きた心地がしなかった。(弱々しく吐露したところで漸く冷静さを取り戻し頬を一撫でして身を離すとスリッパに足を通してから共に寝室へと移動しようか)何処でも。おまえと居られるならついてく。

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■朝比奈紘
……早く来ないかな(起床して暫く寝室の目覚まし時計をぼんやりと見ていたが3つあるうちのどれもが同じ速さで時を刻んでいれば諦めたように息をつき視線を外して。それから先、恋人に会える時間となるまでどうやって過ごしていたかよく覚えていない。記憶にあるのは黒のハーフパンツと同色のTシャツに着替えたことと、メロンソーダを2人分グラスに注いだことだけ。ソファで寛ぐ気にもなれずキッチンに突っ立ったまま恋人を思ってちびちびとメロンソーダを飲んでいると、名前を呼ばれる声にぴくりと肩を上げ。いつものようにインターホンが鳴るとばかり思い込んでいたため、不意を突かれ慌てて玄関へ向かえばそこに恋人の姿が見えたのなら合鍵を使ってくれたのだと分かり顔がほころび。スリッパを用意すると広いリビング、ではなく気分的に寝室がいいのかそちらへ案内しようと)来てくれてありがとう。鍵開けてくれると思わなかったから、嬉しさ倍増。……ん、入って。今日こっちで話してもいい?>入室

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■椿屋夏緒
(最近であればこの時間は強い日射しに肌を焼かれる時間帯、今日に限っては雲に覆われ幾分か暑さが和らいでいるが先を急ぐ足元は自然と駆けて到着した頃には額から汗が伝い。見慣れた建物を見上げ、黒地に裾や袖にストライプのプリントがされたTシャツに膝下丈のカーキ色のパンツ、スニーカーというラフな出で立ちでオートロックを抜け。何処と無く緊張に張り詰めてしまう表情は頬を軽く叩く事で解し握り締めた合鍵を使って扉を開け)…紘ー、居るか?>入室

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■椿屋夏緒
おい、なんでそれ知って…って理由なんか一つしか無いか。(意味ありげに口にする単語には何処か聞き覚えがあり、それが昨日の出来事であれば記憶が結びつくのに然程時間はかからず見られていた恥ずかしさと共有出来ていた嬉しさにより複雑な心境が表情に滲み)こらこら、落ちても知らねーぞ。腕の力抜けるような悪戯はいけません。(嫌がるどころかこの状況を楽しみ始めた相手をしっかりと抱き上げて移動する最中、戯れつく仕草は心を射抜かれるほど可愛いものであれど相手の安全が第一と心を鬼にして咎めるべく唇をかぷ、と甘噛みして。辿り着いたベッドへゆっくりと恋人を降ろしてからその隣へ己のも横になり、今にも意識を手放してしまいそうな恋人が昨晩迎え入れたドーベルマンを大切に扱っている姿は最高に可愛らしく両手で顔を覆って悶えること数分、落ち着きを取り戻して自身も眠りにつき。翌朝になれば身支度を整えて眠気の残る顔で見送ってれる愛しい相手の頬へ唇を寄せてから帰宅するだろうか)おやすみ。俺もおまえの事が大好きだ、ゆっくり休めよ。>退室

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