島左近
俺ってやっぱ、あんたじゃねえと駄目だったんだ。最近痛感しちまって、本当どうしようもねえすね。だって別れたのも遊んだのも、今更こんなん言ってんのも全部俺の勝手なんだから。
あんたは可愛い人だから、きっと良い人見つけてると思う。俺もたくさん遊んだ、賽子も酒も女もさ。けど、なんでかな…ふと思い出しちまう。最近、月が綺麗だったからかな。沢山怒られたし、気難しい所もあって大雑把な俺は偶に喧嘩もしたけど、あんたは優しくて静かで綺麗で、お月さんみたいな人だった。
弱気な俺を甘やかすんじゃなく、隣で窘めてくれた。時々俺より男らしい所もあったっけ。
もうあんたみたいな人には出逢えない。この一年?でよく分かっちまった。だから俺はあんたも誰も、もう探す事はできねえ。遊び人つう在るべきかつての姿に戻ります。当時のあんたなら、激昂するだろうな。けど許して下さいね、少し泣きそうなんすから。
大谷吉継
われが苦しんでいる時に手を差し伸べた者よ。あの日あの時に受けた恩を幾年も忘れたことは無い。心より慕い、支えとし、信じていた、実にらしくもない不毛な想いを長年に渡り懐き続けていたのだ。なれど、ぬしの口より『信じてない』と言われた時に気付いてしまった。肩を並べられる友と思ったのはわれのみ、ぬしには都合良く使える捨て駒に過ぎぬのだと。
――怨みはしまい。見る目が無かったのはわれの眼なり、全ては未熟が招いたこと。
最後の一通、届けど見ずに破り捨てたことも明そう。要件は伝えたのだ、返書を綴る義理も無ければ必要性もない。何より疲れた。ぬしはぬしを咎めぬ者達に囲われたまま心地好く生涯を過ごせばよかろ。

われが為さずとも世の流れは予知に近付きつつある。今後の流れ?教えぬよオシエぬ。
片倉小十郎
いつかの日、貴方様を潔く見送ったつもりでいましたが、気遣いを盾に幾度もお声を強請りましたな。総て見透かされている気がしたのは、建前で本音を晒さなかった故でしょう。今更と思うならば尚更、足踏みばかりで変わらぬ事は百も承知。なれど、貴方様の決意をどうして無に出来ましょう。
飲み込む言葉は数知れず、貴方様に飲み込ませた言葉も数知れず。然しながら、現在に後悔は無い。唯一悔やむならば、俺のこの手で甘やかして差し上げたかった。貴方様を第一にして、ひたすらに我が儘に。御身を大事にしない、貴方様の代わりに。
いつかの日は、いつになるか。約束を違える予定は御座いませぬ。貴方様のお声がこの耳に届くのを、いつまでも。
くれぐれも、御油断召されるな、政宗様。
黒田官兵衛
誰かを助けたいと思う事があの日の罪だったと言うのなら、一生罪人のままでいい。
咎は背負う。枷も鎖も、今の小生には似合いだ。
罪の為に、自分の願いの為に、自分の意志で生きてやる。
悔いた事なんざ無い。あの日の小生は、確かにそれを全て貫いたんだ。それまで築いてきたものと引き換えに。

やっと、此処まで来た。
いつかは逢えるのかも知れんし、二度と逢えんのかも知れん。
だが何一つ、否定はしない。
無くした全ても欠けた自分も、この根付いたままの恋情もな。