島左近
桜の季節に出逢って半年、片時も離れず傍に居た筈のあんたが少しずつ離れて行ってるのは解ってた。
あんたの「おかえり」が嬉しくて、賭場通いもきっぱり止めて、真っ直ぐにあんたの処へと息を切らす毎日がスゲー幸せだった。

…何処で、歯車が欠けちまったのかな。

さっき、あんたと交わした数え切れない程の文を全部焼き捨てたよ。
想い出は優しいから、振り向きたくなっちまう様な逃げ道は残せない。
褥で淫らに濡れるあんたも、寂しいと縋るあんたも、嫉妬に口を尖らすあんたも、愛してると囁くあんたも、全部全部心の奥にしまって俺は先に進むから。
だから、…これで本当に最後。
短い間だったけど、あんたと一緒に笑って歩いた毎日は幸せだった。

さよなら、俺の愛したお月様。
いつかまたどこかで。
石田三成
貴様の匂いを感じる度に振り向きたくて堪らなくなる。自ら手を離しておきながら、結局私はそれを後悔している。それを愚かだと笑うか、家康。貴様は今幸福か。もう新たな相手と歩み始めているのか。…貴様の幸福を素直に祈れぬ私を憎め。私は、まだ。
前田慶次
秋が近付くと思い出す、あんたが俺の元へ来たのも二回とも秋だった
今外へ出ればもしかするとまたあんたがひょっこり出て来るんじゃ…なんて訳がない、手を離したのは俺だ
元気だろうか、また誰かに気をつかっていないだろうか、笑顔で居るだろうか
欲しがっていた菓子をあげられずすまない、桜は見れたか、…花火見れたか?
こんなに気になるくらいなら手なんか離さず一緒に居れば良かった、後悔先に立たず
あんたの大丈夫の有難味も忘れて走った一時の楽しみは脆く壊れて散々、後には何も残らなかった
誰かと重ねた肌よりもかじかんだ手を擦るあんたの温もりが今でも鮮明に残ってる、お陰で誰に触れても人の体温なんか分からないままだ
報いはこのままずっと続くんだろう、あんたの居ない冬にこの手だけが熱いまま

きっとあんたはもう俺の顔なんて見たくもないんだろうから、あんたの姿を借りて
駄目な大人に二度も付き合わせてしまってすまなかった
今度はあんたの素の笑顔を大事に出来る優しい人を捕まえろよ、…ちゃんと恋人になって貰えよ
もう遅すぎるけれど俺も好きだった、…好きだったよ、少年
石田三成
此れで良かったのだと、言い聞かせる。
奴を解放してやれた。
変わり行く…日に日に開く距離に耐えられなかった。
不要だと手離される前に私は逃げた。

臆病者だと笑うといい。
次逢うものは私とは異なる愛らしく甘え上手な貴様好みの者であるといい。

さようなら、私の__。
____。