大谷吉継
右から一押し。
左から一押し。
前後が狭まり、やれ…仕上げに天が落ちて来た。
ぬしが開いた箱へ、逆戻り。

可笑しな事もあるものよ。
最早出る事も叶うまい。

幸は元より、不幸も遠い。
われは潰えた。
オヤスミよ。
真田幸村
貴殿の事が愛しくて堪らぬのだ。ただそれだけを繰り返し、幾ら待てど来ぬ文を待つことすら慣れてしまった。久方ぶりの姿に笑いしか溢れぬのだ。誰も貴殿の代わりになどなれはせぬ。と、知っていながら他の者すら傷付ける。貴殿はそれを存じておるのだろう。しかし某は待つことしか出来ませぬ。いっそ笑うて下され政宗殿。
石田三成
あのような日々を美化するな。私という存在を貴様の記憶から忘却しろ。そうだ、何もかもを消してみせろ。
過去を振り返らずに一歩踏み出せば、あとは時間が癒してくれる。私の中の執着心は既に消え失せた。あとは貴様だけだ。
…いや、こんな風に筆を取っている時点でそうではないのかもしれない…。だが、それでも良い。もう考える事はやめた。この思考は奴の為に使いたい。

もう、あんなにも辛かった日々を思い出したくはない…私も悪かったと理解しているが、諍いばかりの日々は思い出したくなどない…。貴様の好いていた私も、私が好いていた貴様も、もうこの世には居ない。それだけだ。
松永久秀
不意の折に弱い己が目覚めては深愛冷めやらず未だ彼の日々を思い出す。一進の意欲は湧かず一退の勇気は無い。言葉違わず唯一無二の卿よ、今も昔も私は思いを伝えるのが苦手なままだ。笑うかね、呆れるかね、古傷を抉るだろうか、それとも何も感じぬかね。卿がどう思おうと思わぬとも活用の仕様もない我楽多の思いを私は捨てる事ができない。どうか許してくれたまえ。ただあの穏やかな日々が心に痛い。