殘香〜yours〜
過去ログ658
2025/9/4 23:01
☆彩 愛 美[打ち上げ花火]
初めて見た 君の浴衣姿が
夏の最後の 夜を彩る
まだ慣れずに 不器用な下駄の音
ガチャリと鳴らして 出掛ける花火大会
夕暮れ時から 出掛けるときめきや
普段とは違う装いの 違和感にドキドキ
打ち上がる花火の あまりの音の大きさに
心を不意に 持って行かれてしまう
空中で拡がる花弁と 重力で垂れる花弁
暗い空に幾つもの 花が咲いた
暑さがそろそろ 落ち着く頃でも
ウチワ片手に 見上げる空
合間でする 会話も浮かれた声
時折じっと見詰め合う 場面もある
たくさんの人 密着する程に
君と僕との距離も 近過ぎてドキドキ
連発するスターマインの 光が揺れる
夜空に拡がって行く 光と煙
息吐く暇さえ無い程に 目を離せなくなって行く
花火に照らされる 君が素敵
どちらが花なのか 解らなくなるけれど
やっぱり僕には 君の方がきれいに見えた…
打ち上げ花火も 最後の時を迎え
天高く打ち上がって 咲く大玉
爆裂で拡がる花弁の 音と衝撃の強さ
暗い空に僕は 幾つもの花を…
そして今まで見た事の無い 君を見ていた…
☆彩 愛 美[秋 る]
終わり行く夏
暑さも忘れる程に
あんなにも
夢中になっていた
全ての事が
嫌になって行く
不意に
一切の事柄に
興味を持てなくなり
気力を保てなくなる
夏から秋に懸けて
雲は形を変えて
流れて消えて
しまう様に似て
頭の中の何かが
全てを閉ざしてしまう
終わり惜しむ夏
流れ落ちた汗のように
流れ落ちた気持ちは
もう元の盆には戻らない
溶け出した氷は渇き
もう元の形には戻らない
秋る季節ね狭間で
何処を見るでも無い視線は
宙を泳ぐように
ただただ空ろに
僅かばかりの
睡魔の中で
夏の長い休みは
やがて
終わりを告げる
☆彩 愛 美[最後の夏休み]
二人で過ごせる最後の夏休みが もう直ぐ始まる
この夏休みが終わる頃 みんなリクルートスーツを
纏いもう遊びとか恋愛とかに時間を
割いている間も無いくらいに 忙しい半年になる
この二ヶ月の間に 告白が出来なければ
もうみんなバラバラに 違う方へ向かうのね
同じグループの中に ずっと居たけれど
その中でも私は殆ど 目立たない存在で
ずっとあなたの側には 公認のあの娘が
寄り添って居たから 告白なんて出来ずに居た
想えば高校の頃から ずっと後ろの方から見ていた
運良く同じ大学で 同じグループになって
それでもあなたの 側には近付けずに
気が付けばあなたの側に お似合いのあの娘が居たの
誰もが認める 二人の間にだなんて
割り込むなんて事は 出来るはずも無かった
ただ手を伸ばすだけで 届く距離なのに
この手を伸ばす事を 躊躇して出せずに居たの
そっとあなたを 周りから見ているしか無くて
今日この日までただの 友達で居るしか無かったの
もう後が無い事くらい 誰に言われるまでも無く解る
でももうこの気持ちは 飲み込むしか無い事も…
告白して嫌われて 離れてしまうのなら
今のままで居ても いいのかだなんて想えても来る
もっとあなたを想い続けて 隣に居たい
それが叶わない事 痛い程解って居るから…
☆彩 愛 美[異変2012]
集中治療室から
一般病棟へと移される
病室の都合で
一人部屋
二人部屋
四人部屋へと
移動して行く
病気も症状も
人それぞれで
部屋だけじゃなく
フロア内には
様々な人が居る
昼夜問わずに
症状は変化し
特に静かな夜は
あちこちから
うめき声が
響いて来る
突然の急変に
慌ただしくなり
医師や看護師が
大勢集まって来て
騒がしくなる
その内ベッド毎
何処かへと
移されて行く
眠れずに
一部始終の音だけを
聴いている夜
カーテンに仕切られた
ベッドの上で
☆彩 愛 美[夏 景 色]
一重二重に重なる 積乱雲が拡がる
一秒毎に姿を みるみる変えて行く
その形に色んな物を 重ね合わせて
何に見えるかなんて 言い合いをした
やがてはそれが 夕立を呼ぶ入道雲だと
気付いてはいても 雨が降り出すまで遊んでいた
夏の枕詞に 君の言葉が聴こえて来る
頭の中では何時も 君が走り廻っていた
夏の景色の中に君が 溶け込んでいて
僕は何時も君の影を 追い掛けていた
夕闇に浴衣着て 慣れない下駄履いて
みんな揃って 出掛けた花火大会
爆音に巨大な 光の共演に
心奪われて 夢中で空見てた
綿菓子 イカ焼 りんご飴の屋台が並ぶ
香りに誘われて アレやコレやと次々に廻った
夏を歌い彩る 君の言葉を噛み締めて
様々な夏を何時も 君と歩んで来た
山を歩き 海を泳ぎ 野を駆けていた
夏を懐かしむ時 瞼の奥に込み上げる想い
一人で居る夜には あの頃の景色がまるで
映画のように頭のスクリーンに 鮮やかに蘇る
夏の枕詞に 君が笑っていたんだね
頭の中で転がる 君が舌を出していた
夏の暑ささえも 君が忘れさせていた
僕の夏は君無しでは 語り尽くせない