
彩 愛 美
ラストワルツ
恋が終わって行く こんなにも簡単な程に
お風呂の栓を 抜くみたいにね
記憶の交差点で 何度か道を
間違えて 見失った 恋の行方
自信たっぷりに 地図め確かめないで
ただ真っ直ぐに この恋を 歩いて来たのに
恋にならない 声がこんなにも
今日も淋しく 震えているの
胸のシンバルを 打ち鳴らして
もうこの恋も終わりだと 教えてくれている
今でも続いている事を 信じていたいだけ
何の余韻も無く 消えるだなんて
悪い冗談なら 止めて下さい
この手を すり抜け 恋が消える
愛する事と 愛される事の違い
その意味すらちゃんと 理解出来ないまま
恋にならない 愛がざわめいて
届かない想いに 震えているの
胸のバイオリン 弾き鳴らして
悲しい恋の終わりを 切なく奏でている
涙が零れる程淋しい ワルツのメロディが
真っ白な頭の中を 空しく流れて行く
恋にならない 恋が叫んでいる
叶わない心が 震えているの
胸のフルート 吹き鳴らして
実らぬ恋が終わった事を 伝えてくれている

彩 愛 美
想い出は何時も
想い出は
鉛筆で書かれた
バラバラの紙切れ
何時か薄くなって
読めなくなる
絶対忘れ無いからと
念を押していたのに
次から次へと
増え続ける新しい想いに
薄黒く汚れて
何を書いたのかさえ
探せなくなってしまう
バインダーも無く
インデックスも無く
ざっくばらんに
鏤められたメモ紙を
全部拾い集めるのは
簡単な事じゃない
だから…
想い出は
上手く残せなくて
間違ったパズルを
自分に都合良く
組み換えて
メモリーして行く
想い出は
心の中で編集された
断片的な
自分だけの
アルバムになる

彩 愛 美
Many Christmas
想い出の一つ一つを 鏤めるようにして
オーナメントに託して 飾り付けて行く
今年一年をきちんと 締め括るようにね
去年とは違うツリーの 飾り付けにする
一つの気〆を 何処かで付けたなら
古い喜怒哀楽も 笑い話に出来る
人それぞれにある 夢色の絵の具
形に変えて クリスマスを迎える
昨日までの全てが 明日へと繋がる
虹の架け橋を 渡るように
時々紐ほどく 過去形のアルバム
立ち止まり振り向くのは 好きじゃないけど
今日一日ぐらいは いいよねだなんて
らしくもないセンチメンタル 想いに更ける
汚したシャツを 着替えるみたいにね
想い出の引き出しも 新しく入れ換える
心の奥底の 宝石箱の中
仕舞い込んで しまう前にもう一度
この胸に抱き締めて 暖めていたい
また何時の日にか 戻す日まで
棄てたり忘れたり する訳じゃない
別な場所へと 大切に保管をして
また新しい想い出を 創り残すため…
夢それぞれ飾る 白紙のツリー
誰かに似せて 飾る訳じゃない
想いを形に変え 明日に繋ぐ夢
幸せの朝を 迎えるため

彩 愛 美
反面教師
一つ所に
人が集まれば
それなりの
組織団体が出来る
そしてそれを纏める
リーダーが求められる
バラバラになる
意見や方向性を
『偉い人』が決めて
それをルールとして
守らせるようにと
押し付けて来るけど
それを一番守らないのも
また『偉い人』だったりする
自分が出来ない事を
『下の者』には
命令と称して押し付け
出来ない事に対して
罰を与えるけど
自分達は
有耶無耶に揉み消して
無かった事にする
だけど
『下の者』とされた僕達は
それを見て知っている事
自分達はそうは
なりたくはないと
ずっと観察していた
まるで動物園の
珍獣を見るようにね
一つ所に
人が集まれば
それなりの
組織団体が出来る
そしてそれを纏める
リーダーが求められる
バラバラになる
意見や方向性を
『偉い人』が決めて
それをルールとして
守らせるようにと
押し付けて来るけど
それを一番守らないのも
また『偉い人』だったりする
自分が出来ない事を
『下の者』には
命令と称して押し付け
出来ない事に対して
罰を与えるけど
自分達は
有耶無耶に揉み消して
無かった事にする
だけど
『下の者』とされた僕達は
それを見て知っている事
自分達はそうは
なりたくはないと
ずっと観察していた
まるで動物園の
珍獣を見るようにね

彩 愛 美
路傍の愛
ストリップディスクの ざらついた画面が
今の二人の 恋に似ているわ
保護ケースを外され テーブルの上に
放置され埃に塗れて やがて傷だらけに
どんなに愛して 手に入れた恋でも
その後のケアを怠れば 簡単な程に
直ぐに磨り減って ボロボロになる
どんな宝石だって 磨かなければただの石コロ
輝けない愛なんて 意味も無い
自販機のジュースのように 簡単な程
誰にだって直ぐに 手に入れられる
何処にでも転がっている ありふれた恋
別に珍しくも無いから 大切にもしない
何の苦も無く 手に入れた恋なら
何時だって代わりくらい 直ぐに見付かるもの
そんな恋なんて した覚えも無い
あなたがどうだって 私にすれば希少な恋
これからまだ輝きを 放つのよ
恋はコレクションじゃ無く 生きているもの
きちんと育てて行かなければ
生き続ける事なんて 出来はしないわ
恋は月のように自ら 輝けはしないもの
太陽があればこそ 輝けるのよ

彩 愛 美
開かずの引き出し
小学生の頃から
ずっと使って来た机
引き出しの中で
長い時間
開ける事も無く
眠ったままの想いを
何時開くとも
解らぬままに
もう
失くしてしまったと
諦めていて
探す事すら
しなくなったけど
この引き出しの
暗い奥深くには
長い時間
触れる事も無く
眠っている
想い出が詰まっている
歳を重ねる度に
新しい知識や想い出を
次から次へと
無理矢理にも
詰め込んで来たから
最初に何を
大事に入れたのかなんて
もう覚えてはいない
再び取り出すのが
楽しみなような
怖いようなとかで
開ける事が出来ない
鍵の掛かった
開かずの引き出し

彩 愛 美
失くした恋と雨の朝
雨の音が 記憶を絡めて
自分の居場所さえ 解らなくなった
暗くて夜が明けた事も 気付かずに
何時もよりもずっと 遅く目覚めた
もう今からじゃ 完全に遅刻だねと
仮病を使って 仕事をズル休み
平日にこうして 何もしないでいると
改めて自分を 見詰め直せる
落としてしまった 恋の単位重く
追試も無いまま 一夜を明かした
何も食べたく無い はずなのに
自分の想いに反し お腹が空いた
仕方無しに残り物を 漁るように
冷蔵庫の中身を 引き摺り出した
お昼が近いわ 簡単に済まそうと
テレビ傍らに 手抜き料理をする
空っぽのお腹と 頭を抱え込んで
笑えないジョークに 苦笑い
普段は嫌な 雨が今日だけは
一番心を 慰めてくれる
ぐったりとした心に 栄養が足りない
明日は幸いにも土曜日 お休み出来る
鳴らない電話と 降り止まない雨と
どちらが救いかは 明らかだった
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