哀切

過去ログ109 2014/8/31 1:54

◆前田慶次
秋が近付くと思い出す、あんたが俺の元へ来たのも二回とも秋だった
今外へ出ればもしかするとまたあんたがひょっこり出て来るんじゃ…なんて訳がない、手を離したのは俺だ
元気だろうか、また誰かに気をつかっていないだろうか、笑顔で居るだろうか
欲しがっていた菓子をあげられずすまない、桜は見れたか、…花火見れたか?
こんなに気になるくらいなら手なんか離さず一緒に居れば良かった、後悔先に立たず
あんたの大丈夫の有難味も忘れて走った一時の楽しみは脆く壊れて散々、後には何も残らなかった
誰かと重ねた肌よりもかじかんだ手を擦るあんたの温もりが今でも鮮明に残ってる、お陰で誰に触れても人の体温なんか分からないままだ
報いはこのままずっと続くんだろう、あんたの居ない冬にこの手だけが熱いまま

きっとあんたはもう俺の顔なんて見たくもないんだろうから、あんたの姿を借りて
駄目な大人に二度も付き合わせてしまってすまなかった
今度はあんたの素の笑顔を大事に出来る優しい人を捕まえろよ、…ちゃんと恋人になって貰えよ
もう遅すぎるけれど俺も好きだった、…好きだったよ、少年

◆石田三成
此れで良かったのだと、言い聞かせる。
奴を解放してやれた。
変わり行く…日に日に開く距離に耐えられなかった。
不要だと手離される前に私は逃げた。

臆病者だと笑うといい。
次逢うものは私とは異なる愛らしく甘え上手な貴様好みの者であるといい。

さようなら、私の__。
____。

◆竹中半兵衛
さよなら、と。
此の一言を告げるのに、どれだけの勇気を要するのだろうね。
僕はずっと子供の侭だ。其れでも良いとさえ思っている。
空がとても近く思えるよ。地が遠く離れていく。接した面に余計な空気が入り込むようだ。なんて哀しい。
僕は本当に馬鹿だよ。

◆大谷吉継
この姿も、この世も…これで終いよ。
ぬしの存在なくば、われにとって食物も砂も変わりない…味気無いものとなりやった。
すべて己の言動が招いたこと…せめて最期は、ぬしの幸せを願うて幕引きとしやるか。
ぬしの傍に、想う相手がおるように…どうか楽しい時を過ごしてくれやれ。
最期に、われの…心からの願いよ。
名をこの口で紡ぐ事すら罪深いか…愛しておる、達者でなァ…__。