
彩 愛 美
[夏 景 色]
一重二重に重なる 積乱雲が拡がる
一秒毎に姿を みるみる変えて行く
その形に色んな物を 重ね合わせて
何に見えるかなんて 言い合いをした
やがてはそれが 夕立を呼ぶ入道雲だと
気付いてはいても 雨が降り出すまで遊んでいた
夏の枕詞に 君の言葉が聴こえて来る
頭の中では何時も 君が走り廻っていた
夏の景色の中に君が 溶け込んでいて
僕は何時も君の影を 追い掛けていた
夕闇に浴衣着て 慣れない下駄履いて
みんな揃って 出掛けた花火大会
爆音に巨大な 光の共演に
心奪われて 夢中で空見てた
綿菓子 イカ焼 りんご飴の屋台が並ぶ
香りに誘われて アレやコレやと次々に廻った
夏を歌い彩る 君の言葉を噛み締めて
様々な夏を何時も 君と歩んで来た
山を歩き 海を泳ぎ 野を駆けていた
夏を懐かしむ時 瞼の奥に込み上げる想い
一人で居る夜には あの頃の景色がまるで
映画のように頭のスクリーンに 鮮やかに蘇る
夏の枕詞に 君が笑っていたんだね
頭の中で転がる 君が舌を出していた
夏の暑ささえも 君が忘れさせていた
僕の夏は君無しでは 語り尽くせない

彩 愛 美
[記憶の中の海]
海が消える
砂浜が消える
防災目的だとしても
人命尊重のためでも
人工的に作られた
砂防ダムによって
山から流れて来る
大量の土砂が
堰き止められて
海の砂が不足する
年々海から
砂浜が消えて
海岸線が変わる
地形図が変わり
陸地が少なくなる
ずっと記憶の中にあった
子供の頃の海が
数年後には
世界から
消えてしまうかも
しれないと…
海が消える
砂浜が消える
やがてこの
記憶さえも
不確かな
もう表現出来ない
架空の存在に
なるのかも
しれないと…

彩 愛 美
[ENGAGE−輝く星座−]
薬指に絡まる 金のリング
選んだ想いは エンゲージ
誓った言葉が 生きている限り
この道は 続き続ける
重なる指の 微かな感触が
未来への道を 照らし出している
Just married 今 この瞬間に
溢れ出す涙を 止められないのよ
いっぱい いっぱい 幸せになろうと
みんなの前で 宣言しようよ
飛ばした花束の 行方を追う
幸せの糸が 伸びて行く
一つの幸せ 分け合うようにね
別の人の手に 届ける
幸せの連鎖繋げて パーティー
みんなの笑顔に 囲まれているの
Just married 今 旅立ちの刻
みんなの言葉に 見送られながら
いっぱい いっぱい 幸せになりますって
温かい拍手 響いているわ
私達だけじゃない ここに集まって来てくれたみんな
いいえ 世界中の人達に 幸せ分けて上げたい…
合わせた手の間に 輝く星座
宇宙(そら)いっぱいに 拡散しようよ
喜びのシャワー 降り注いで
世界中みんな 幸せであれ

彩 愛 美
[幽体離脱]
公衆電話からだと思われる 非通知電話が入る
それが私からの電話だと あなたは気付く事も無くて
意図して失くした 携帯電話には
あなたからの着信が 入る事も無い
自分から切ったラインを また繋ごうとしている
途切れた空間と空間が 繋がる事は落盤してもう無い
進もうとする私と 戻ろうとする私が
何処かで分離して 行こうとしている
もうとっくに終わって しまった事だと
どんなに言い聴かせても 泣く子供みたいに
壁をすり抜けて思い飛ばして あなたを追い掛ける
体と心が着いたり離れたりを 繰り返している
私の中に芽生え 始めている
別人格の 私の存在
自分の都合に合わせて 他人の振りをしている
無意識なスイッチ一つで 性格まで切り替えてしまう
優しくある私と 強暴である私と
どちらとも言えない 支離滅裂な
パラレルに転回 して行く世界
自分でも信じ難い グラデーション
出逢いと別離を何処かで ラインを引いて
ピリオドマークを付けるか 迷っているの
顔の無い記憶の中の あなたと私が
陽炎のように ゆらゆらとしている
ぐら付いている曖昧な 私の覚悟
もうどうだっていい事 また蒸し返してさ

彩 愛 美
リ・フ・レ・イ・ン
[リ・フ・レ・イ・ン]
さよならが
消えない…
耳の奥に焼き着いて
何度も何度も
繰り返されて行く
さよならが
消えない…
耳鳴りの風鈴が
カランカランと
凪の脳裏に
響き渡る
夏蝉の雑然の調べが
交錯する平衡世界で
消えない消しゴムを
何時までも
擦り続けていた
さよならが
消えない…
どんなに記憶の
上書きを繰り返しても
深く刻み込まれた
消せない言葉が
レリーフのように
何度でも浮き上がる
さよならが
消せない…

彩 愛 美
願 い 星
ずっと 探し求めていた星 届くはずなど無いと
とっくの昔に 諦めて居たけれど…
わたしだけでは無く
あなただけでも無い
ふたりの友達 その友達が みんな一つになって
初めて星は光を放ち 標星になった
何十億の人が 一つの地球(ほし)に住んで
ただ一つの願いに 手を合わせれば…
大きなボーダーの 向こう側へ…
いま わたしにも 出来る事
そう あなたにも 出来る事
夜毎 見上げて求めていた星 夢の国を彷徨い
名前さえも 知らないままに居たけれど…
ぼくだけじゃ無い
きみだけじゃ無い
誰かの声が 誰かの声を呼び 拡がって行き
やがて何時かは 名前を知る日が来るのだろう
悲しみの数を 数えて居るよりも
笑いの数を 数える方がいいさ…
大きなこの海の 波の先へ…
いま ぼくのままで 出来る事
そう きみのままで 出来る事
願い 祈り 叶えようとする力の
一つ一つは とても小さいけれど
みんな纏めて 一つに出来るのならば…
この 大きな青空の 彼方まで…
いま わたしにしか 出来ない事
そう あなたにしか 出来ない事
きっと きっと わたし達にしか 出来ない事

彩 愛 美
変革(即興詩)
失くなった物を
惜しんでみても
戻らない現実は
変えようが無い
出来なくなった
過去の日常生活
後ろ向いて居て
何が出来るのか
今これからの事
出来る事考える
明日を探さねば
この足このまま
変革の時は来た
退化か進化を今
問われ居るのに
この足このまま
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