哀切

過去ログ43 2011/6/17 18:02

◆徳川家康
未だお前が側に居て愉しかった頃を思い出してみたんだ。だが直ぐに、其が既にお前の気持ちが離れていた頃だったと気付いた。
…彼の時の笑顔も何もかも、本当は嘘だったんだよな。ワシはお前の気持ちにも苦しみにも気付かぬ儘、独り善がりな恋を続けていた。
愚かと云う以外に無い。

今ワシは、お前との日々を忘れようとしている。
お前の告げてくれたスキを疑いながら、一つ一つの思い出の裏にあった真実を噛み砕きながら。


忘れられないと、知っているんだがな。

◆長曾我部元親
最後にアンタが言った愛してるって言葉が今でも心の奥に残ってやがる。いっそ過去形にしてくれたら…嫌いだと言ってくれたらどれだけ楽だったか。
自分から別れを告げておきながら情けねェもんだ。ふと思っちまうんだ…また、会いたいってな。

◆徳川家康
貴方が悪い訳じゃない。
貴方は最後の引き金を引いただけだ。

見知らぬ者に敵意を向けられ罵られ、逆にワシも友に不用意なことを言って傷付けてしまった。
支えてくれていた大切な者二人との別れもあった。

様々な、救いようもない毎日が続いた、その最後が貴方だった。
口は災いの元とはよく言ったものだ。

要らぬ言葉は飲み込もう。
元よりそうしてきたことが最近出来なくなっていただけだ。
悩みも弱味も主張も、愛も。
誤解を与えるならば、人を傷付けるならば伝える必要などない。

現にワシらは前より幸せになっているじゃあないか!

◆毛利元就
そなたも出逢いの姿を覚えているか
ただ今は…互いに同じ過ちを繰り返さぬこと…我が望むはそれだけよ

泣き縋るそなたをおざなりに愛した我の身勝手が何より憎い
水無月の今日の日なら、愛していると告げることも赦されるだろうか
戯れと笑ってくれるだろうか
互いに欺し欺され繋いだ月日は今も友愛を育むにも壁が残るほどの憎悪で繋がれている…悲しくはない…声が届かぬことに比べれば

指輪は…あの場所に捨てた
そなたもそうしたと言った
それでも刻んだ文字と花の香りまで忘れることは出来ずにいる

今は友としてそなたの幸福を祈っている…

◆前田慶次
これでお前は幸せになるんだよな?
甘い言葉を吐くしか出来ない俺が、どうやって傷つけずにお前と離れられると思うんだい?丸く納めて、さいならなんて出来る筈もない。傍に居たいって言ってくれて、好きだって言ってくれる子の手を振り解くなんてさ、他のやり方が分からなかった。
どうやったって、俺は阿呆なんだよ。

お前にも、あの子にも幸せになって欲しいと思ったんだ。その為には俺って必要ないとも解った、解ったらもう傍には居られないだろ。
ごめん、ごめんよ。
本当は今だって好きで好きで、たまらないんだ。ひと月足らずで溜まった文を読み漁って、お前の家の、庭先に咲いた桜をぼんやり眺める。
こんなに遠く離れた場所からでしか、幸せを祈れないなんてな…意気地なしにも程があるね。

地獄の淵から祈るしか出来ないけど、最果ての地に住む愛しい鬼が、どうか俺の傍に居るより、少しでも幸せでありますように。俺が付けた傷が、あの子の優しい想いで埋まりますように。
嘘吐きな俺は閻魔様に舌を抜かれて一人で地獄に堕ちるよ。

◆石田三成
詰まらんと嘆くならば、何故貴様は私を選ばなかったのかと問いたくなる。私だったら貴様を退屈になどさせなかった。少なくとも、そう励んだ。
だが理解っている。初めから、貴様が想う奴と私は同じ場所には立っていなかった事を。時代が違う、やり方が違う。貴様に恋情を抱いた事こそが愚かだった、その程度が判らん私ではない。

貴様が好いた奴が、私とは異なる姿だったら我慢も出来た。私と姿を同じくする者への想いを呟く貴様を、私が見て居られる筈もないだろう。
今も尚、貴様の言葉は私の心を抉る。どうすれば貴様を諦められる、どうすれば貴様を嫌いになれる。

秀吉様、どうか全てを忘れる許可を。…などと、代理の私が許可を頂く必要など無い。