怪談集


E-mailは非公開です。

Password (投稿パス)
Name
Title
Comment
Password (削除パス)


 
  【No.39 Res.0】

廃校舎〜足音〜


1 Name
 
Kさんが移動してきた頃には既に小さな事務所は手狭で、それにKさんは
技術職だったので大量の図面や書類を保管する必要もあったから、結局
Kさんのデスクというか居場所は旧保健室に決まった。

旧保健室といってもその部屋は元々保健室だったものを二分割して
2/3を女子更衣室に改装したものの残りだったから非常に狭く
壁に備えつけてある視力検査の器具でやっと保健室だったと分かる程度の
小さな部屋だった。

Kさんが移動してきてからの最初の仕事は書類関係の整備だった。
その為にKさんは毎晩10時か11時くらいまで残業していたのだが、
ある日体育館の隣にあるトイレに行こうとすると真っ暗な体育館の中から
何か音が聞こえてきた。
それは体重の軽い人間というかはっきり言って子供、しかもそれが裸足で
走っているようなピタピタという音だった。
Kさんはそれからすぐに旧保健室に戻り荷物をまとめて逃げるように
退社した。
それからもKさんは毎晩残業を続けたのだが、夜になったら体育館や
その入り口の辺りを絶対見ないようにして仕事をした。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.38 Res.0】

廃校舎〜常夜灯〜


1 Name
 
その頃にはまだ日本国内にも部品製造の仕事があって、それなりに
忙しい時代だったのでKさんは一人で残業休日出勤するという事が
珍しくはなかった。
ある日Kさんは一人で残業を終え、社員の出入り口となっている
旧生徒玄関の鍵を閉めて退社した。
この出入り口には防犯の為に一晩中点いている蛍光灯というか
常夜灯があってそのスイッチは玄関の中にあるので外からは
操作する事ができない。

そしてその次の日の朝にKさんは休日出勤をする為に一人で出社した。
Kさんは生徒玄関の鍵を開けてから常夜灯を消そうとしたのだが、それが
既に消えている。
最初Kさんは蛍光管が切れたのだと思い念の為にスイッチを入れてみると
ごく普通に点く。
つまりKさんが玄関の鍵を閉めて退社してから無人の校舎の中から
何者かが現れてスイッチを操作して常夜灯を消したという事になるのだが
それが何者なのかは分からない。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.37 Res.0】

廃校舎〜FAX〜


1 Name
 
こんな感じでKさんは廃校舎で起こる怪現象を体験していったのだが
その事を誰かに話すという事はなかった。
それは古い廃校舎だから仕方がないという諦めと共に他の社員が
誰もそんな事を話してはいなかったという所為もあった。
しかしあるとき、この工場に居る全社員どころか他の関連会社まで
噂が広まってしまうような怪現象が起こってしまった。

ある日の午前中、他の関連会社から「そちらにFAXを送信できない、
機械が故障しているのではないか?」という電話が入った。
事務所の女子社員が確認してみると確かにFAX機が作動しない。
朝方は普通に動いていたのだから故障だろうという事でそのFAX機は
NTTのレンタル品だったからNTTのサービス係が電話で呼び出された。

呼び出されたそのサービス係は問題のFAX機をちょっと調べていたが
「電源のスイッチがOFFになっています」と答えてスイッチを入れ、
念の為に送受信のテストを行ってからあっけなく帰ってしまった。
そのFAX機が置いてある事務所にはほぼ一日中社員の誰かがいて
ましてや自分等が使うFAXの電源を勝手に切ってしまうという様な事は
まず考えられなかった。

この話はすぐに広まり、この廃校舎にはやはり何かが居るという
会話が社員の間で交わされるようになった。
すると今まで息を潜めていた怪現象の体験談が様々な社員の口から
次々と語られるようになった。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.36 Res.0】

廃校舎〜ある男性社員の証言〜


1 Name
 
その現場担当の男性社員は「機械がイタズラされて困る」と語り出した。
彼の話によると彼はその日の仕事を終えてから翌日の仕事の準備をし
それに合わせて機械類の電気的な設定を変更してから帰るのだが
その設定が翌朝来てみると勝手に変えられているとの事。

これは毎日起こるという訳ではないらしいのだが、彼は既に諦めていて
そういうものだと観念してずっと仕事を続けていたらしい。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.35 Res.0】

廃校舎〜二階の幽霊〜


1 Name
 
それらの証言を語る社員の中でも唯一はっきりと幽霊を目撃した
というのはAさんという女子社員だった。
ある日Aさんは校舎二階の倉庫に用事があって一人で校舎二階の
長い廊下を歩いていた。
倉庫といってもそれは各教室の事であって黒板には当時の中学生が
書いた落書きがそのまま残り、壁にはまだ時間割りが貼られていて
既に片付けられていた机と椅子が無い以外にはよくある中学校の
教室そのままの姿だった。

Aさんが二階の長い廊下を歩いていると向こうのほうに
一人の男性が歩いて行く姿を見かけた。
その男性は後ろ姿しか見えなかったのだがAさんの証言によると
水色というか青い作業服を着て黙って廊下を歩いて行く。
Aさんはそれを同僚のBさんだと思い声を掛けたのだがその男性は
それを無視して廊下を歩いて行くといきなり曲がって
倉庫となっている教室に入った。

AさんはBさんにちょっと聞きたい事があったのでその男性の
後を追い、その教室に入ってみたのだがそこには誰もいなかった。
この廃校舎は中学校だったという性格上、卒業生がたまに訪れる事が
あって、それは事前に事務所の了解を得てから入る人の他に勝手に
入り込んでくるという人もいたから、校舎内で見かけた不審者を
男性社員が追いかけたら途中で消えてしまったという事もあったらしい。

このFAX機の一件があってから念の為にお払いをするか?という
意見も確かにあったのだが、少なくとも事故を起こしたりするような
悪い霊ではないみたいだからそのままにしておこうという意見が
多数を占めて結局お払いがされるという事はなかった。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.34 Res.0】

廃校舎〜台車〜


1 Name
 
Kさんがある時残業をしているとこんな事があった。
その日Kさんは社員が全員退社しても一人で残って残業をしていた。
その日の残業は製品の検査でKさんは倉庫(一階の教室)に置かれた
製品を台車に積み、作業場(体育館)まで運んでそこで検査をする。
そして検査が終った製品をまた台車に載せて倉庫まで運び、そして
それを予定された製品の検査が終るまで繰り返し行う。

Kさんが最初に製品を搬入をしたときに作業場の入り口の通路に
何故か部品を載せたままの台車が置かれていてその入り口を塞いでいた。
Kさんは誰かが置き忘れたのだろうと思いその台車を脇にどかし
そして自分が押してきた台車を作業場の中に入れた。

やがてKさんは運んできた製品の検査を終え、また製品を台車に載せて
倉庫に運ぼうとしたが、作業場の入り口がまたさっきと同じように
自分がどかしたはずの台車で塞がれている。
これにはKさんもちょっとゾッとした。
他の社員は既に全員退社していてこの廃校舎に残っているのは自分一人。
そういえば作業場の入り口に背を向けて検査をしているときに
背後で何かが動く音がかすかに聞こえていたのをKさんは思いだした。

それでもKさんは気合を入れて倉庫と作業場の往復を繰り返し
そして予定された残業を全て終えたのだが、それからあとは後ろを
できるだけ見ないようにして大急ぎで退社した。
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


 
  【No.33 Res.0】

廃校舎〜エピローグ〜


1 Name
 
時代が21世紀を迎える頃にこの工場は閉鎖されるという事になった。
機械や設備は全て撤去され人員と共に本社に引き上げられた。
「あんな所によく一人で居られるねぇ」と関連会社の社員に感心
されているのか呆れられているのかよく分からないKさんだったが
そんな彼も住処の旧保健室を引き払い本社に引き上げた。

この廃校舎はその数年後に解体されて更地となった。
そしてこの村も平成の大合併で無くなり、この校舎があった場所には
今では全く別な建物が建っていてその敷地の入り口の辺りには
この中学校の卒業生有志によって建てられた記念碑が立っている。
                           (この項終り)
 
 Del

Password (投稿パス)
Name
Comment
 
 


Next



10790Hit.